造作キッチンをつくる。無垢材・金物なし、育てる台所のこと(前編)

造作キッチンを計画しています。木工作家さんと一緒に、合板も金物も使わない台所をつくる試みです。無垢材・石…素材の経年変化を受け入れ、使うほどに育っていくキッチンをH&Atelierとして提案したいと考えています。
まず「何を大事にしたいか」を整理することから始めました。
合板やフラッシュ材の化粧を手放し、木・土・石などで台所をつくる。傷も染みも蓄積されて味わいになる、使うほどに使う人自身も一緒に育っていく道具をつくりたい、という思いです。輸入材の価格が読めない今、近くの木で、近くの作り手と、良いと思うものをつくる—それが一番素直だと感じています。
H&では無垢材を使い空間を構成することが多いです。そうなると、家具やキッチンも同じ様に経年変化した方が空間に馴染み、ひいては人にも馴染むのではないかと思っています。

金物を使わずにつくる案で進めることになりました。敢えて制約をつくることでより、台所という場と近くなるのではないかと。金物を使わないということは引き出しは昔ながらの木の摩擦を利用することに。それはどの様な寸法であれば現実的なのか、扉は無くても良かったり、必要なところは引戸だと金物は必要無いな…など色々と方法はあるものです。金物を使わない良いところは、ほぼ壊れることはないと考えられるところです。調整が必要になる日は来るかもしれませんが、スライドレールが駄目になり、もし手に入らないともう使えないという様なことはありません。体の一部の様に長く使えるのではないかという考えです。

昔聞いた話ですが、ドイツの方の話だったと記憶しています。キッチンの話をしていた際に容易に取り外し可能なキッチンにしているのは、親から子供に独り立ちの際にプレゼントして、引っ越しをしても一生使えるように…とのこと。何て豊かな贈り物なのだろうと思ったものです。
おおらかで豊かな暮らしを営みたいと思っている方は、例え少なくともいらっしゃるのではないか。豊かと言っても人それぞれではありますが、 土に近い暮らしの「おおらかさ」を、端正な納まりで品のあるものにしたいと計画中です。
ご協力いただく作り手の作家さんからは、材料のこと、ミズメザクラやケヤキ、クリなど水分に依る黒ずみについてや、鉋(かんな)で木を削るのか、ペーパーをあてるのかでも水を含んだ際の木の表情が違うこと、塗装はするべきかしないべきか、台所で人はどう振る舞うことが多いのか…後学のために学ぶことは山ほどあります。答えは出ずに、暮し手に依る、ということも大いにあります。そこは悩ましいところですが、最終的にはジャンプするところもありながら、自ずと決まって行くものかもしれません。

考えるとキリは在りませんが、社会の不安定な状況を考えると近くのものでつくり、良いと思うことを提案出来るということは幸せなことだとより感じています。
次は合わせる「石」を見に行きたいと思います。続く…
H&Atelier 平田 智子
H&は丹波篠山と神戸を拠点に活動する建築設計事務所です
https://h-and.net