JOURNAL

板倉構法

2026.06.11

兵庫の丹波篠山で暮らす中で、身近なものを身近な人たちから頂いて食べ、時に自分たちも作り日々過ごしていくことはとても当たり前に感じると同時に、とても大切なことだと考えています。
人の幸せというものは私たちにとっては個人で実現するものではなく、身を置く環境やそこで日々関わる人々によってもたらされていると感じています。
地域に依存した生き方は、そうしたすべての身近な存在が長きにわたって続いていくことに繋がり、社会や自らの幸せへも直接繋がっています。 
それは田舎でも都会でもどこでも同じではないでしょうか。

建築においてそのことを突き詰めて考えていくと、古民家の在り方に行きつきます。
木、土、石、茅で作られ、その材料は人が運んで来られる物で、地域の人が作る。
地域ごとに手に入る材料は違う為色や風合いが異なったり、雪や雨、気温、風や地震など地域によって異なる気候を身を以て知る人が作ることにより、形態は自ずと地域に適応したものとなります。
では新築する際にも古民家に倣って作ればよいか、というとコストの面で不可能であったり、耐震性が担保されなかったり。
また古民家は現代の私たちの暮らしと間取りや意匠が馴染まない面が大きく、総合的に現実的ではありません。
同様に伝統工法を用いて作られた建築も素晴らしいですが、コストの面や、真壁を原則とした和の意匠により一般的に普及するには難しい面があると感じています。

そんな中、板倉構法という構法と出会いました。
正倉院中倉や伊勢神宮を始め、古来から神を祀る為であったり、穀物などの大切なものを守るために用いられてきた板倉造り(伊勢神宮は板倉造りの源となる神明造り)という構法があります。
板蔵造り
それを現代に発展させたのが板倉構法です。
柱と柱の間に厚板を落とし込み壁を構成し、地震の揺れや風の力に対してこの厚板が粘ることで建物を倒壊から守ります。
大きな変形に対しては板が柱にめり込むことで粘り、初期の変形以降倒壊に至るまでの粘りが大きく、また変形後の立て直しも可能です。
土壁に比べて軽い建築物となることで耐震性もより高く、耐震性や防火性能において大臣認定も取得し、また耐力壁の初期剛性を高めてある為板倉の上からは好みの仕上げを自由に貼ることも可能です。
仕口はもちろん伝統工法とすることも出来ますが、工場でのプレカットと一般的な構造金物を用いた軸組での対応も可能です。
変形能力が高い為、石場建て基礎の建築との相性も良い。
そして主に用いるのは日本中ほぼどこでも手に入る杉材。
身近なもので、身近な人と、そして沢山の人の為に。
そうした意味で私たちとしては板倉構法はひとつの理想の構法だと考えています。
板蔵造り

minkaではこの板倉構法と石場建てを用い、未来の古民家を目指しています。
そしてもちろんminka以外の一般建築でも同様です。
私達は建築家として建築を世に生み出すことを生業としていますが、その結果として私達の周りの社会がより良くなっていく、これ以上の喜びはありません。
H&は板倉構法を用いた建築を一つの大きな取り組みとして、今後進んでいきたいと考えています。

H& Architects 半田俊哉