JOURNAL

カエデたち

2018.11.07

芦屋の家では造園工事が始まりました。
芦屋の家
いつも足場が取れた後、思い描いていたよりも何か物足りない・・・と正直感じるのですが、造園工事が始まるとその足りなかったものがすぐにはっきりと分かります。
いつもお庭をお願いしている露地屋さんからは、余り植栽を植えすぎるとせっかくの建物が見えなくなりますが・・・と言われますが、いつも気にせず建築が見えなくなってもいいので好きなようにしてくださいとお願いしています。
建築はどれだけ美しい物を作っても、どれだけ気を使っても周辺との馴染み、もしくは周辺環境へ与える力には限界があると考えています。
それに比べて植栽はよほど気候風土に相応しくない植栽をしない限り様々な植物を植えても総合的には馴染むと考えています。山がそうであるように。

芦屋の家では二年ほど前から打ち合わせを重ね、建物の形状に合わせた枝振りの樹木を選んでもらっています。
道路から入るとノムラモミジなど様々なカエデの間を通って玄関までアプローチします。そのアプローチ上では二階が張り出し、一階にとっての庇のような形態となっています。
カエデたちはそれに合わせて足元ではアプローチを遮らないようまっすぐ立ち、人間よりも少し高いところではその張り出しを避けるように屈曲しています。
まるでこの建物のためにずっと生育されてきたかのように。
芦屋の家
周辺環境のために、また防犯のためにもあえて道路に対して塀や門で閉じないオープンな外構としているこの家。
プライバシーが気になるところですが、冬になると葉が落ちてしまうカエデたちの足元で常緑樹たちがしっかりと昼間のプライバシーを守ります。
良い造園家との出会いのお陰で建築を考える時に建築だけでできることを考えずに、良い意味で植栽に頼った計画ができています。
そしてそれは建築だけでは作り出せない豊かなものへとつながると感じています。

エイチ・アンドは神戸と篠山を拠点に活動する建築設計事務所です
神戸事務所:兵庫県神戸市魚崎北町5-3-16-307
丹波篠山事務所:兵庫県篠山市東吹