JOURNAL

敷地周辺踏査

2020.07.17

敷地周辺踏査地元篠山にて新築住宅計画のための踏査を施主さんご夫婦と共に。
踏査の下準備として最新のグーグルアースの空中写真から始まり、国土地理院の1978年、1948年の空中写真、1888年の帝国陸軍が作成した測量地図まで遡るのが定番となってきました。あと地質ナビも。
事前にそれを見ているだけで色々なことが分かってきて、また色々な推測が立って来ます。
今回の踏査地は元々友人も住む集落で、また近くに車で良く通る道もあり本当に見慣れているはずなのですが、その推測を元に現地を歩くと全く違った視点で、見えていたはずなのに「見えていなかったもの」が見えてきます。
この写真はとある段差なのですが、段差の上には集落があり、段差の下は畑しかありません。
その場にいると少しわかりにくいのですが、地図や写真で見るとこの段差は連続しており、古い写真になればなるほどその段差が顕著となり、段差を境に田畑の割られ方や土の色まで違っているのが見えて来たりします。誰が見ても昔はこの段差の下までが川、もしくは少し氾濫する度にここまでは水が来たであろうことが容易に想像できてきます
ハザードマップを見るとその段差を境に浸水想定がくっきりと分かれていました。

この段差の上側ながら川に近い土地を買われた地元出身の施主さん、ご両親からは大丈夫なのかと言われてとりあえず「大丈夫でしょ」と答えていたそうですが、1888年の地図にもそこに家が建っていた事実を知ったり、今日一緒に歩いて浸水想定の理由を肌で感じながら確認できて良かった、とおっしゃっていました。

昨年環境デザイナーの廣瀬俊介さんに教えて頂き始めた建築計画前の踏査、このように科学的な観点からの地域環境は読めてきている気がするのですが、地域の風土を読み解きながら建築、場所をデザインするということに関してはまだ客観的に説明可能なプロセスは踏めていないなぁと感じています。
今はとにかくその場所で過ごす時間やその場所の歴史、事実の情報量を増やすことでその場所の印象を心に刻んで行っています。刻む前と後では場所の見え方が全く変わってくるので、自ずと自分がそこに「ふさわしい」と思う物事にも変化が出てくるはずです。

そして何よりもいつも施主さんと一緒に歩くと他愛もない話や、ふとしたやりとりから会話だけでは見えないその人の姿や夫婦のキャラクター、関係性などが感じられることもとても大きな収穫だったりします。

地域を肉体に取り込む。施主を肉体に取り込む。
とても大切なプロセスとなっています。

エイチ・アンドは神戸と丹波篠山を拠点に活動する建築設計事務所です
神戸事務所:兵庫県神戸市魚崎北町5-3-16-307
丹波篠山事務所:兵庫県丹波篠山市東吹