JOURNAL

手刻み

2023.04.19

鎮守の森に抱かれた住宅では構造材の加工が手刻みにより進められています。

効率やコストを考えると有利な工場でのプレカットに大分押されて無くなりつつある作業風景です。
継手の精度、機械ではできない継手、材料を見極めながら作れる、などなど手刻みのメリットもありますが、最近手刻みをする大工さんから聞いて一番心に残ったのは「建物と自分との精神的な深いつながり」という言葉です。
「手で刻むことで大工にとっては建物との深い精神的な結びつきを感じます。
棟上げ後の造作工事を大工が進める中でも真心がこもった仕事にもなるし、引き渡し後もなんだか気になってちょくちょく見に行ったり。
そしてそんな仕事が残っていることで大工になりたいと思う若い世代が続いていけば施工した会社がこれからも存続することにつながり、施主さんとしてもアフターケアが継続して受けられることにも繋がるのではないか。」、と。
その作業を工事中に目にするお施主さんにとっても尊い時間となり、建物と自分、そしてそれを作ってくれた人との深いつながりを感じながら生きていけるのではないかと思います。
あとこの手刻みという作業、大工さんにとっては本当に楽しい作業だそうで、私たちの事務所の刻みを終えた大工さんは「あ~、手刻み楽しかったぁ!」と清々しく言っていました。

昨今省かれて行ってしまう様々な手間、それは一見それを享受する人の為ではありますが、省こうと思ってもいなかった大切なものも一緒に省かれる、こぼれ落ちていくのだなぁと多々感じています。
物価が上がっていく世の中では更に省かれて行ってしまうものが増えていくと思います。それは人々が生き残るための知恵ではあるのですが、最終的にはその生きる意味そのものも省くことにつながっていると危惧しています。
微力ではありますが、そういったものをなるべく省かずに生活の面でも仕事の面でも生きていきたいと考えています。

エイチ・アンドは神戸と篠山を拠点に活動する建築設計事務所です
神戸事務所:兵庫県神戸市魚崎北町5-3-16-307
丹波篠山事務所:兵庫県丹波篠山市東吹