JOURNAL

大栄窯業さん

2020.08.04

瓦を作られている大栄窯業さんを訪問する為に淡路島へ行って参りました。
大栄窯業さんの主力商品である銀古美とかわら美人。
右がかわら美人で左が銀古美。
大栄窯業瓦業界では今までいかに劣化しないか、経年変化しないかを追求し、現在辿り着いたのが右のいぶし銀の瓦。
対して左側は自然な経年変化が持ち味の銀古美。
銀古美はつい三年前に商品化されたばかり。
最近では自然なムラと経年変化のある銀古美の方が需要が高まっているとのこと。
 
土をただプレスした状態の瓦が工場の二階に並びます。
大栄窯業一階にある窯の熱気により二階は灼熱の暑さ。

プレスされた瓦たちは8枚ごとにリフトに乗せられ、一階へと運ばれます。
大栄窯業鉄骨の工場と相まって、スキー場のリフトを思い出し一瞬涼しい風を感じた気がしましたがここは灼熱地獄です。

窯で一日焼かれた後に扉を開け温度を下げている最中の瓦たち。
大栄窯業一度に2000枚の瓦が焼けるというこの窯。それでも一軒の家にはわずかに満たない分量であったりもするとのこと。
全ての工程を説明と共に拝見すると、数千枚もの焼き物がとある建築の為に窯で焼かれ、屋根に敷き詰められるということが無上の贅沢に感じます。

窯にはチョークで何やらメモ書きが。
大栄窯業銀古美は通常の瓦造りの工程と違い、焼き物の還元焼成のように微妙な調整で酸素を絞りながら焼くとのこと。
一分でもやりすぎると時に瓦は緑色になったりとても繊細な作業。これはそのコツが書かれたメモ書きかもしれません。

道上さんに教えて頂いた地元の海岸。
大栄窯業
元々この先に瓦を積み出す港があり、積み出しの際にこぼれ落ちた瓦たちが長い年月をかけ海岸に溜まっているとのこと。
明らかに瓦色をした比重の軽い石たちが沢山。無数のそれらを見て淡路島における瓦の歴史の深さを感じます。
この形を見て我慢できずについ海に向かって水切りをしてみたところ、薄さと軽さのお陰で過去にないほどの水切り回数と飛距離を記録しました。
瓦はコスト面、耐震面でその他の屋根葺き材に比べて不利な面は否めません。
道上さんは「瓦には使ってもらうための必然性が必要」と以前におっしゃっていました。
客観的な必然性と言えば耐久性や遮熱性、遮音性の高さがあります。
ただ何よりも自分たちにとって必然性を感じたのは日本の風景を作り出す大事な要素という側面です。
これは論理的な物ではなく主観的なものですが、瓦屋根の並ぶ集落や街並みを見て美しさを感じる人は多いはずです。
微力ながらも日本の風景をつくる一端を担っている者として、少しでも日本の美しい風景を作り出すべく尽力していきたいと決意した一日でした。
 
エイチ・アンドは神戸と丹波篠山を拠点に活動する建築設計事務所です
神戸事務所:兵庫県神戸市魚崎北町5-3-16-307
丹波篠山事務所:兵庫県丹波篠山市東吹