JOURNAL

原木探し

2024.12.25
篠山のとある陶芸家さんの裏山にて、施主、山主(伐採依頼主)、木こり、大工、そして設計が集まり、これから工事をする建物で使用する構造材の伐採打合せを行いました。
山歩き
必要な構造材のリストを見ながら山を歩き、実際にどの程度の材料がこの山から確保できそうかの確認をして回りました。
山歩き
120角の柱を取ろうと思ったら末口で直径がどのくらいなければいけないのかや、すべての材料をこの山から確保することは難しそうなので、それであれば大きな断面の材を優先して確保する方がコスト的にはメリットが出るのではないかなど、あれやこれやお互いの立場で思ったことを原木、というか杉や檜の木々を前に話し合いました。
山歩き
木が欲しい人=施主、木を伐ってほしい人=山主、木を伐れる人=木こり、木を加工する人=大工、その使い方を考える人=設計、こうして書き出してみると全員が一堂に会することって不思議には思えないのですが、実際にこうしてその全員が、ましてやその山で集まることは今までありませんでした。
立ち会った全員に新たな発見や、見て知っていると思っていた風景への身体的な理解が深まり、この後の作業が例えいつもの作業であってもその向こうや手前にそれぞれの顔や手が見え、そうしなかった場合とは過程や結果に対して感じる質感は全く違ったものになってくると感じています。
山歩き
木こりの友人は「今まで市場に運んだ後どうなっていたのか分からなかった原木が、どう使われるのか、そしてだれがどう使うのかを知ることができてとても良かった」、と言ってくれました。
全く建築関係ではない施主さんにとってとても良い経験になるだろうとは思っていたのですが、木こりの彼にとってもそうした変化があることは新たな発見でした。
こうした瞬間を敢えて設けなくても建物は建ってしまうので、こうして集まることは効率面から言うと非効率かもしれません。
でもこの時間自体がとても豊かな物であり、この後にもその余韻のようなものが続き自分の人生を少しずつ満たしてくれると考えると、とても大事な瞬間だなと感じています。
私たちのアトリエを建築する際に始めたこの取り組みを、少しずつ広げていこうと考えています。
このプロジェクトはその第三号、時代と逆行しているようにも見えますが、こうしたことこそが向かうべき未来なのではないかと考えています。
 
 
エイチ・アンドは神戸と篠山を拠点に活動する建築設計事務所です
神戸事務所:兵庫県神戸市魚崎北町5-3-16-307
丹波篠山事務所:兵庫県丹波篠山市東吹36-1
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