ニッチという余白
2026.02.11

建築の骨格となるような構造的な部分ではないけれど、昔からなぜか心惹かれる部分があります。
それが「ニッチ」です。

ニッチとは、壁の厚みを利用して、一部を凹状に窪ませた飾り棚や小スペースのこと。 構造上、どうしても必要なものではありません。 なくても生活に支障はないのですが、ふとした壁面にこれがあるだけで、空間の質が少し変わる気がします。
庭で摘んだ季節の花を一輪挿しにしたり、 旅先で出会った小さな置物を飾ってみたり、 あるいは、毎日手に取る鍵の定位置にしたり。仕上げの素材を漆喰にするか、無垢の木にするか。 石や土で設けたことも。

あるいはその奥行きや高さ、光の入り方によって、ニッチは単なる棚ではなく、ひとつの小さな風景になります。
合理性や効率、数値化できる住宅性能だけを追い求めると、こうしたなくてもよいものは削ぎ落とされがちです。 けれど、一見無駄に見えるこの小さな壁のポケットが、建築の中に「余白」を生み出し、ふと立ち止まる時間を与えてくれます。

数値には表れないけれど、日々の暮らしの中でいいな…と感じる瞬間。 そんな嬉しさもまた、私たちが大切にしたい家の性能のひとつではないかと、勝手に考えています。
H&Atelier 平田 智子
H&は丹波篠山と神戸を拠点に活動する建築設計事務所です
https://h-and.net
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