土の営みと、目と手の解像度
H& Fieldは、事務所を中心に背後には山を背負い、目の前には庭、そして田畑が広がっています。
背後に控える山側は、中生代 前期白亜紀(ベリアシアン期〜バレミアン期)の地質。およそ1億4500万年前程度に出来た地層です。新生代(6500万年前〜)の地層が多い盆地の中では、少し珍しい場所でもあります。
そのような地質を持つこの場所の土は、典型的な粘土質。 丹波の黒豆など、単一栽培には非常に向いているのですが、どうしても「水はけが悪い」という特徴を抱えていました。 水はけが悪いと、生き物の根は呼吸ができずに腐りやすくなり、そもそも植物が生きにくい環境になってしまいます。

写真:笹の倉舎 笹倉洋平
私たちの実験は、大切に思っていた一本の木が枯れたことから始まりました。
ただ植物を植え替えても、元気がなくなっていく。
その根本的な原因は、目に見える地上部ではなく、見えない「土と水の流れ」にあると考えたのです。
そこから、手探りでの土中環境の改善が始まりました。 本当は少しずつ自然に掘り起こされてきた土を掘り起こしたくはなかったのですが、「水の通り道」を作っていくことから。
その後は、自分たちの手を動かす日々です。 山と平地が接する間に、大きな素掘りの溝をつくる。 かつて土を堰き止めていたコンクリートには穴を開け、蓋をしないように水の流れを変えていく。 そして、土の中に炭を入れ、微生物たちの住処を増やしていく。
始まりは私たちの働きかけが必要ですが、後は自然に任せることになります。

そのような物理的な手当ての連続の中で、山からの水の流れは、明らかに良い方向へと変わっていきました。
水はけが良くなったこと。 そして何より、重い粘土質だった土が「団粒状」になり、少し軽やかな、ふかふかとした土へと変化していく様を手のひらで感じるのは、ただただ純粋な嬉しさがあります。
土が変化していくサイクルは、人間の時間軸から見れば、信じられないくらいゆっくりとした流れです。 しかし、すでにある土が元気を失っているように見えても、人間の働きかけを変えれば、その営みは私たちの暮らしの速度に少しだけ引き寄せられます。

もちろん、専門家にすべてお任せすることもできます。
ただ、自分で出来ることを少しずつでも重ねていくことは、私たちの「目と手の解像度」を上げてくれます。それは同時に、土の近くで暮らす、本当の楽しみを手に入れることでもあると考えています。
現在、私たちはさらに一歩進んで「炭素循環農法」にも挑戦中です。 見えない土の中での実験は、まだまだ続きます。 また少しずつ、この場所での営みをレポートしてお知らせできればと思います。

H&Atelier 平田智子