山から建築をつくる
月書房・H&の建物は、そのほとんどが「山」からできています。

構造を支える杉や桧、外壁の杉、天井の桧、土壁の下地となる木ずり、そして空間に置かれた栗や楢、桜の家具たち。
少し街から離れ、私たちの心を和ませてくれる山の風景は、実は日々の暮らしと直接つながっています。
私たちの背後に広がる裏山には、この集落の方が50年ほど前に生まれた際、「いつかこの子が家を建てる日のために」とその方のお爺様が植えた桧の林がありました。
しかし使われずに時間が経過し、倒木の危険すらある状態でした。

私たちはその方のご厚意に預かりそうした桧の木たちを使わせて頂けることになりました。
そして友人の木こりに伐採を依頼し、製材所で乾燥と製材を経たのち、それらをこの建物の土台や柱として還すことにしました。
山の中で作業をする木こりへ伝える材の数量は、なるべく明快でなければなりません。
そのため、この空間は四畳半のグリッドというシンプルな法則で設計しています。

必要な材の種類が絞られることで、山での仕分けもスムーズに行うことができました。


細い材からは土台や柱を中心に。少し太い材からは、柱や土台を取った残りの部分で取れるだけの間柱を木取ります。
余った原木もすべて間柱として生かし、それでも残ったものは林産センターへ持ち込み、伐採の費用へと循環させています。

伐採したヒノキの一番玉(根元)は、友人の木工家にオリジナルスツールへ仕立ててもらいました。


ヒノキとともに伐り出したアベマキという雑木も、別の作家の手により、座網の椅子として生まれ変わっています。


すぐそばにある山の素材を使い、信頼する近くの職人たちに手仕事を依頼し、その空間で暮らす。
ここにあるすべてのものの向こう側には、いつも人の顔や風景が見えます。
そして例え都会であってもそうした空間に身を置き暮らすことで、同じ風景が見えると感じています。

それはまるで、目に見えない根っこや菌糸のようなもので、自分たちと自然、そして人が深くつながっているような感覚です。
そうした身体的なつながりを感じられる暮らしのあり方が、環境や他者を思いやる心を生み、私たちが考える永続的な豊かさへと、静かにつながっていくのだと考えています。
H& Architects 半田俊哉