川の風が通り抜け、土中の水脈が巡る場所へ。
東京・多摩川のほとりで再考する「人と環境再生」のリノベーション。
建て主さんからのご要望は、「より人間関係が深まり、広がる家にしてほしい」というものでした。
兵庫・丹波篠山の自然豊かな場所を拠点とする私たちに、東京で何ができるのか。 私たちがいつも大切にしているのは「敷地とその周辺を巡る踏査」ですが、今回は土地だけでなく、建て主さんを通じて「人」を紹介していただくところからプロジェクトが始まりました。
敷地は、路地の先にある陽当りの良い場所。 かつて美容室だったというその空間には、人が自然と佇むような記憶が残っていました。そこで、人を招きやすいよう玄関を広めに設け、扉を開くと畳の間と一体で使える大らかなプランへ。
かつての「1階が店舗、2階が住居」という構成を読み解き直し、1階を「家族や来客を優しく迎えるパブリックな場」として再編集しました。 構造材をあえて見せ、杉の無垢床に漆喰の壁を合わせることで、建物の新旧の記憶を馴染ませています。
外構のテーマは、「街の行燈(あんどん)のような場」。 かつてモルタルで固められていた路地前の地面は、コンクリートを剥がして土中環境を改良しました。多摩川周辺に自生するツツジや、食べられる実のなる木、香りの良い植物を植え、小さな森の入り口をつくっています。
自分たちだけで楽しむのではなく、風景も、実りも、時には花束としても、ご近所さんにお裾分けできる庭へ。もう間もなく、建て主さんにバトンタッチです。この場所に、温かな光が灯る時間を楽しみにしています。
後書きとして・・・
兵庫と東京。 物理的な距離はありましたが、画面越しの対話と、要所での膝を突き合わせた打ち合わせを重ねることで、距離を感じることなく想いを共有し、形にすることができました。
なにより、この再生を面白がり、技術と心意気で応えてくださったフジイ工務店さん、そして職人の皆さん。その手仕事のおかげで、この場所は再び息を吹き返すことができました。 関わってくださった全ての方に、心からの感謝を。